番外地

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夏海と座木 ss-1                 

   『理不尽なこと』


オレ、篠乃目夏海(しののめ
なつうみ)25歳、独身。某市役所勤務。

只今、同じ部署の座木安芸文(ざき あきふみ)28歳に絶賛片想い?中。

 

「はぁ…ダリぃ…帰りたい…」

「……。」

山のように、書類や回覧板や、保険屋のおばちゃんがくれたチラシが乗っている机の隙間に突っ伏して、言ってみる。

「腹減ったし」

「……。」

俯いて腹を撫でてみる。
相槌くらい打ってくれればいいのに。

オレはクルリと椅子を回して、ノートパソコンの画面をスクロールしている座木さんの方を向いた。

キーボードを叩いてはいないから、内臓のゲームでもやってるんだろう。

座木さんはタバコを吸う人だけど、所内は禁煙だから、今は棒付きの飴を舐めている。

「見てよ、もうみんな帰っちゃったし、フロアで電気点いてるのここだけじゃん。ラーメン食べに行こうよ。ねえ座木さ、」

「シノ」

手を止めて画面から顔を上げた座木さんが、咥えていた飴でオレを指した。

「ちょっと黙って、目瞑れ」

「えっ」

夜のオフィスに二人きりって、まさかこの展開は……。

期待しながら目を閉じると、座木さんの手がオレの顎を掴んだ。

「んぐっ?!」

驚いて目を開けると、棒付きの飴が口に突っ込まれていた。

「お前はさっきからキャンキャンと煩いんだよ。こっちは地権者からの電話待ちしてんだっつーの。ただでさえヤニ切れで苛々してんだから、少し黙ってろ」

言いたいことを言った座木さんは、ピタピタとオレの頬を叩いた。

「ふぁーい」

結構甘いなこれ。

「座木さん、これ何味?」

「たしかプリン」

「自分で買ったんじゃないの?」

「緒田さんがくれた。もう飽きた」

「だからってオレに寄越すかな、もう」

プリン味の飴をモゴモゴしてると、座木さんがふっと笑った。

本当は、オレが残ってても意味は無い。無いんだけど、座木さんは、オレが明日スムーズに仕事が出来るように残ってるから、関係無くはない。

座木さんはわざわざ言う人じゃないし、そういうところも好きだと思う。

 

タイミングを計ったように電話が鳴り、オレは息を潜めた。

書類を確認しながら、時々メモを取りながら話す姿を見ていたら、電話を切った座木さんが言った。

「見てんじゃねぇよ」

「いきなりそれ? ひでぇ」

笑って立ち上がり、帰りの支度を始めると、座木さんが書類を引き出しにしまいながら言った。

「さっさと飯食って帰るぞ」

「飯行くの?」

オレは一人暮らしだけど、座木さんは実家暮らしだ。帰れば夕飯はあるだろうし、真っ直ぐ帰るものだと思ったのだけれど。

「帰ったらすぐ寝たいんだよ。で、どうするんだ?」

「行く」

即答した。
 

飴に付いていた棒をゴミ箱に捨てて、天井の電気を消す。

味噌だ醤油だと話しながら階段を降りるオレ達を知っているのは、非常灯と月の光だけだった。

 

 

  【恋のしっぽは右まわり(仮)】スピンオフSS

       2015.08.16

 

: original : - : - : posted by あもう灯留 :
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